坂本鉄男 イタリア便り 国会議員の年金事情

 罪を犯して刑務所に収監されても、年金は支給されるのだろうか。少なくともイタリアの場合はそうだったが、国会議員経験者に限って事情が変わってきた。

 イタリアの上下両院は5月中旬、これまでたまってきた国民の政治に対する不信の解消と緊迫する国庫の負担軽減のため、特定の不正行為で有罪判決を受けた元国会議員への議員年金支給を停止する法案を通過させたのである。

 支給が停止されるのは、マフィアやテロ、贈収賄にからんだ犯罪などにより、2年以上の有罪判決が確定した元国会議員である。

 イタリアでは、元国会議員の年金は高額なことで有名だ。大体、議員歴が15年ぐらいで月額4千ユーロ(約50万円)、20年で5千ユーロ、30年で6千ユーロの月額年金を受け取ることができる。これにほかの年金を加えれば、普通の暮らしを営むのであれば一生、安心して過ごせる。

 今回の法案通過により、年金支給停止の処分を受ける元国会議員の中で最も著名な人物は、今でも政界に隠然たる力を持つシルビオ・ベルルスコーニ元首相で、月額約8千ユーロ(約100万円)の年金を失うことになる。

 もっとも、イタリアで十指に数えられる大金持ちだけに、このくらいの額は痛くもかゆくもないだろうが。

坂本鉄男

(2015年5月31日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)