坂本鉄男 イタリア便り アラブ王侯の爆買い

中国観光客の日本での「爆買い」は化粧品や日常品だが、アラブ産油国の王侯のローマでの「爆買い」は高級ホテルである。昨年10月には、日本の首相や大臣の定宿であり、かつてはローマ一の高級ホテルであった「グランド・ホテル・セント・レジス」がカタール資本に買収された。

また最近、ベネト通りの真ん中の高級ホテル「エキセルシオール」がこれまたカタール資本に2億2200万ユーロ(約290億円)で買収された。このほか、日本人になじみのある買収されたホテルを挙げると、ベネト通りの「ホテル・フローラ」と「ホテル・レジーナ・バリオーニ」、ボルゲーゼ公園の近くの「ジョリー・ホテル」、スペイン階段の上の「ホテル・デラ・ヴィーユ」などがある。

またブルネイの王様は、映画スターの定宿として名高く、最上階のレストランからの眺望が素晴らしい「ホテル・エデン」を買収した。

ローマ中心部の高級ホテルがこれほどまで外国資本の手に落ちるとは、さぞホテル業界は悲嘆に暮れているだろうと思ったら大間違い。ホテル協会会長が地元紙にこう語っていた。「需要があることはそれだけ魅力があることだ。ましてや、今イタリアの不動産価格は底値だから当然のこと」と。モノは考えようだ。

坂本鉄男

(2016年1月10日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)