坂本鉄男 イタリア便り 「犬猿の仲」とは言わザル

今年は申年である。もともとえとの申は動物のサルとは関係がなく、覚えやすいようにサルを当てただけだそうだ。

さて、日本では南は九州から北は下北半島まで全国的にサルは生息しているので、民話の「桃太郎」や「さるかに合戦」、狂言の「靱猿(うつぼざる)」、見せ物の「猿回し」などで分かるように、昔からヒトとサルの関係は深かった。

これに反し、ヨーロッパではほんの一部の地域を除きサルは生息していないので、犬とサルが仲が悪いことは知られていない。このため日本語の「犬猿の仲」はイタリア語を含め欧米語では「犬とネコの仲」となる。

ヨーロッパでサルが生息する唯一の地とは、欧州南端のジブラルタルの岩山で、200匹以上がヨーロッパ唯一の野生霊長類として保護されている。このサルは1704年の英国による占領前から生息していることから、8世紀から15世紀末まで続いたサラセン民族支配の時代にもともとの生息地のアフリカの熱帯・亜熱帯地方から持ち込まれたものと推測されている。

ローマ時代、北アフリカがまだ緑地と森林で覆われていた頃、ローマのコロッセオで闘奴と戦わせるためいろいろな猛獣が運び込まれたが、サルは相手にされなかったに違いない。

坂本鉄男

(2016年1月3日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)