坂本鉄男 イタリア便り ローマ法王がサッカーチームのオーナーに?

法王フランシスコは昔から庶民のあいだで暮らしてきた。まだ法王になる前のホルヘ・マリオ・ベルゴリオは1936年、イタリア系移民を両親にブエノスアイレスで生まれた。

少年時代から地元のサッカーチーム「サンロレンソ」の大ファンであった。やがて神学校に入り司祭の道を歩み始めるが、生まれ故郷の司教に就任すると試合の度に出かけ、選手に勝利の祝福を与え始めた。だが、最後には監督に「試合前の選手の集中力を妨げる」として立ち入りを拒否されたという逸話まで残っている。

チームはその後、経営難で球場を失い、最後は破産寸前に追い込まれたが、ちょうどそのとき、ベルゴリオがローマ法王に選出されたのである。

これを受け、金持ちファンの一人がクラブを買い取ってチームを立て直し、ベルゴリオが法王に就任して約3カ月後には敵チームを負かした。

ファンの一人がサン・ピエトロ広場での一般謁見の場で法王にこのことを報告すると、法王は指をV字に立てて勝利を喜び、この姿が世界中に報道された。

法王のチームとなった「サンロレンソ」はクラブ会員が激増し、クラブの次の目標はスタジアムを再建して法王に献上することだそうだ。

坂本鉄男

(2016年2月21日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)