坂本鉄男 イタリア便り 高額所得の申告者が少なすぎる! ずさんな税務当局の恩恵にあずかる人々

 イタリアは6月に前年度の所得申告を行う。最近発表された2014年度の申告状況を見ると、相も変わらないこの国の徴税能力の低さが浮かび上がった。

 まず、高額所得者だが、10万ユーロ(約1141万円)以上の申告者は42万4千人で、納税者全体の約1%にすぎない。

 さらに所得額を引き上げて30万ユーロ(約3425万円)以上になると、僅か3万2千人と、全申告者の0・1%でしかない。ヨットを所有し、海や山や外国に別荘を持つお金持ちが多いイタリアでは、にわかに信じがたい数字だ。

 一方、職業別に申告所得を見ると、町工場など中小企業経営者や商店主らに関しては、正式に帳簿をつけている人たちの平均所得が3万1千ユーロ、どんぶり勘定式のものが年額1万7千ユーロであるという。

 また、弁護士や医師などいわゆる自由業の平均申告額は3万6千ユーロで、それほど多くない。

 このほか、給料から源泉徴収される百パーセントの正直申告者のサラリーマンや年金受給者の平均所得は2万100ユーロで、国にとっては最も確実な税収源である。

 結局、大部分の申告をそのまま受け取るだけで、精査をしない税務当局の現在の方式の恩恵にあずかる人々がいかに多いかということになる。

坂本鉄男

(2016年7月3日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)