坂本鉄男 イタリア便り 海に囲まれても…

 イタリアの地図を眺めると、長靴部分の東側はアドリア海、西側はティレニア海、長靴の底の方はイオニア海と周囲を海で囲まれている。これでは誰でもイタリアは海産物が豊富だろうと思うが、大間違い。イタリア産の魚介類は国民の需要の30%を満たすにすぎず、あとの70%は輸入に頼らざるを得ないのが実情だ。

 毎年欧州諸国の魚介類の自給率と輸入依存度を調査している英国のシンクタンク「新経済財団」が、今年3月に発表した報告書「漁獲依存度2012年版」によると、イタリアの09年の自給率は30・2%。計算上は1月1日から4月20日で自国産魚介類を食べ尽くし、翌21日からは輸入物だけに頼ることになるという。07年の場合は4月30日から輸入に頼る計算で、09年は自給率がさらに悪化したことになる。

 欧州連合(EU)全体の自給率も09年は51・1%で、フランスは38・6%、スペインも39・7%にすぎない。

 乱獲による魚介類の減少に歯止めをかけるため、昨年以降、アドリア海では8月1日から2カ月間、ティレニア海は10月1日から1カ月間の全面漁獲禁止期間を設けている。

 海浜レストランで出される魚介類が目の前の海で取れたものでないこともあるわけだ。

坂本鉄男
(5月27日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)