坂本鉄男 イタリア便り しゃれた贈り物

 去る11日、イタリアのナポリターノ大統領からローマ法王ベネディクト16世に、法王在位7周年を祝って、ムーティ指揮のローマ・オペラ座オーケストラによるベルディとビバルディの曲の演奏会がプレゼントされた。

 ドイツ南部・バイエルン地方出身の法王は、同地方の伝統に従い音楽好きで、若いときから暇があるとピアノを弾いて楽しみ、特にバッハ、モーツァルト、ビバルディの曲を愛する。

 バチカン市国内の「パウロ6世ホール」で開かれた今回の演奏会では、普通の演奏会とは違った演出も加わった。

 つまり、オーケストラの各パートの第1奏者が、世界的な名弦楽器製作者の故郷クレモナ市の諸団体から特別に貸し出された4丁の名器を演奏し、花を添えたことである。

 4丁とは、主に17~18世紀に活躍したアントニオ・ストラディバリ作のバイオリンとチェロ、ジュセッペ・グァルネリ作のバイオリン、2人の師匠、アマティ作のビオラであった。

 神学者である法王は、かつて「美術、詩、音楽、自然を愛さない真の神学者はあり得ない」と述べたことがある。

 この教養の高い法王に対する大統領のプレゼントの選び方のエレガントさにも、心から感服した。

坂本鉄男
(5月20日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)