坂本鉄男 イタリア便り 電車の切符まで!

 中国製の偽ブランド品や危険な玩具類などを摘発・押収したというニュースは、一年中イタリアの新聞をにぎわしている。去る5月にも、ローマ中央駅周辺の中国人街で60万点の衣類や装飾品が税関監視兵の手で押収された。

 だが、人々をもっと驚かせたのは、イタリア中部リボルノ港で先月、中国の寧波から入港した貨物船から押収された200万枚の偽切符だ。この偽切符は、ローマの空の玄関レオナルド・ダビンチ国際空港とローマ中央駅を結ぶ「レオナルド特急」の特急券であった。1枚15ユーロ(約1430円)と値段は安いが、200万枚となると総額3千万ユーロ(約28億6千万円)になる。この偽物特急券は中国国内で印刷して密輸されたものだが、中国製の偽商品の摘発には慣れた税関吏もこの種の偽物は初めてだという。また、観光客が知らないで偽特急券を購入して使えば使用者が捕まるというから観光立国イタリアにとっては迷惑千万だ。幸いイタリアの国鉄は新しい自動改札機を7月上旬から導入したので、偽切符はもし販売されても無駄になったはずだという。

 中国は日本を抜く世界の経済大国になったのに、相変わらず偽物作りの大国でもある。日本の鉄道各社も隣国からの偽切符の“侵入”には注意した方がよさそうだ。

坂本鉄男
(7月22日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)