坂本鉄男 イタリア便り 名ブランドの流出

 今月上旬、イタリア高級婦人服の名ブランド「ヴァレンティノ」が、既にこのブランドを所有していた英国の投資会社ペルミラ社から、中東の産油国カタールの王族の会社に7億ユーロ(約660億円)で売却された。昨年は、別の著名高級服ブランド「フェレ」もドバイの会社に譲渡されている。

 この10年前後のイタリアの高級装飾・ファッションブランドの国外会社への売却は枚挙にいとまがない。

 1999年にローマの「フェンディ」がフランスの巨大企業LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)社に買収されて以来、2000年にはフィレンツェの「エミリオ・プッチ」がLVMHに、これまたフィレンツェで生まれ1世紀以上高級服飾品の歴史を誇ってきた「グッチ」が、家族内紛争の末、04年に傘下の「ボッテガ・ヴェネタ」とともにフランスのPPR社に買収された。

 最近では、11年に高級宝飾店として世界に名を知られる「ブルガリ」もLVMHの支配下になった。

 いずれも家族が株式の大部分を握る同族会社で売却がしやすいほか、当主が大体3代目であることが共通している。現在のような大資本による「弱肉強食」の時代には家族経営は難しいのかもしれない。

坂本鉄男
(7月29日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)