坂本鉄男 イタリア便り 人気海岸はハダカ天国

 世の中はさまざまだ。お金を払って裸の女性を見に行く人もいれば、お金を払って裸になりにいく人もいる。

 本日の話題は、夏にちなんだ後者、つまりヌーディスト専用海岸だ。カトリックの影響が強く、保守的なイタリアでは、この種の海水浴場は古都ラベンナの近く、ナポレオンが一時的に幽閉されたことで有名なエルバ島や、人がまばらな海岸の多いサルデーニャ島など数は極めて少ない。

 だが、他の南欧諸国には、ギリシャやスペインをはじめとして非常に多い。

 スペインのバルセロナから遠くない海岸には、1996年以来、廃村を改修したヌーディスト専用の村があるほか、南仏のモンペリエ近くには、ヨーロッパ最大級のヌーディスト専用海岸があって、家族専用の区域から同性愛者専用の区域などもあるという。

 だが、近年、イタリア人に人気があるのは、アドリア海の対岸、つまりスロベニアとクロアチアの海岸だ。美しい入り江が入り組み、大小さまざまな島が浮かぶ静かな海だ。

 ここは長年、ドイツ人が好んできた海岸だけに一番幅を利かせている外国語はドイツ語。そしてFKK(Freikörperkultur)、つまりは「ハダカ天国」の宝庫だ。

坂本鉄男
(8月5日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)