坂本鉄男 イタリア便り “驚異”の日本チーム

 イタリアはフェンシングの一大強国である。特に女子は強く、今回のオリンピックでもフルーレ個人で金、銀、銅メダルを独占したうえ、同団体でも金を獲得した。

 一方、男子もフルーレ団体で順調に勝ち進み、決勝戦では日本と金を争った。

 しかも、これまであまり名前を知られてこなかった日本チームと大接戦を演じ、テレビの実況中継のアナウンサーは興奮し通しだった。最後に45対39でやっと勝ったときには、思わず安堵(あんど)の吐息をつくありさまだった。

 強敵イタリアをここまで追いつめ、銀メダルを取った日本チームの健闘は「見事」の一語に尽きる。

 ところが、である。日本の新聞のインターネット速報を読んで驚いた。

 銀メダルの獲得に貢献した淡路卓選手は、補欠だという理由で、日本オリンピック委員会(JOC)からは旅費もユニホームも支給されず、選手村にも泊まれなかったという。

 銀メダルの報奨金200万円は支給されることになったようだ。しかし、イタリアチームが聞いたらビックリして腰を抜かすに違いない。

 日本の金メダルが少ない原因は、こんなところにもあるのかもしれない。

坂本鉄男
(8月12日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)