坂本鉄男 イタリア便り 鑑定士、相次ぐ誕生

 最近の日本では、「豚カツはあの店が一番うまい」などと食通ぶりを発揮する人が多いようだ。だが、この世には専門の味の鑑定士、つまり本職のテイスターがいろいろな部門に存在する。日本人が専門のテイスターといえば、まず頭に浮かべるのはワインの専門家、ソムリエだろう。これはイタリアも同じで、味利きといえば、まずソムリエを考える。
 だが、イタリアはワイン以外にもオリーブ油やチーズなど、うまいものだらけの国だけに、それぞれの鑑定士協会が存在する。ただ、各部門とも歴史が浅く、あまり知られていないのが実情だ。
 当然のことながら、一番古いのはソムリエ協会で創立は1965年。次いで古いのが、ワインの搾りかすを蒸留して作る酒「グラッパ」の鑑定士協会とされ、意外に新しいのが、83年設立のオリーブ油鑑定士協会や89年にできたチーズ鑑定士協会だ。昔は地方がそれぞれの特産品として誇りを持ってきた食品なので、全国規模の鑑定士協会など思いもつかなかったのだ。しかし、最近は続々と出現している。
 93年にはコーヒー、99年にはサラミ、2001年にはバルサミコ酢の鑑定士協会がそれぞれ誕生。09年にはパン鑑定士協会が生まれた。私の知らない鑑定士協会がまだまだありそうだ。
坂本鉄男
(12月2日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)