坂本鉄男 イタリア便り クリスマスの箱庭

 間もなくクリスマスだ。イタリアのクリスマスの飾りといえば、昔はイエスが誕生した馬小屋の場面を再現する、一種の大型箱庭の「プレゼピオ」が代表的なものだった。だが現在の主流は、世界的流行に押され、やはりクリスマスツリーである。
 ローマの町で一番大きなプレゼピオとクリスマスツリーは、バチカン市国内のサンピエトロ広場の真ん中に据えられ、観光客の目を楽しませてくれる。
 昨年のツリーは、ウクライナから贈られた高さ約30メートル、重さ約5トンのモミの巨木であった。今年は南伊モリーゼ州の「モミの木の里」として知られる山村からプレゼントされた約25メートルのモミの木で、今月初めにパトカーが先導するトレーラーで運ばれてきた。
 さて、そのプレゼピオだが、赤子のイエスと聖母マリア像の置かれた高さ5メートルほどの小屋の内外に、等身大の羊飼いやロバ、牛の像を配するという精巧なものだけに、約50万ユーロ(約5500万円)という制作費がかかる。このため、財政が苦しいバチカン市国内でも無駄な支出だと問題になっていた。
 だが、「捨てる神あれば拾う神あり」というべきか、今年は南伊バジリカータ州が観光宣伝のため、スポンサーになることで無事解決した。
坂本鉄男
(12月23日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)