坂本鉄男 イタリア便り 大みそかは「赤」!

 色彩の中でも、赤は視覚を通じて人間の心理に一番強烈な影響を与える色だといわれる。
 このため、注意を促すものとして信号機では赤が「止まれ」という意味で使われる。また、フランス革命以来、赤は進歩派の色とみなされ、イタリア統一運動ではガリバルディ将軍の千人隊が赤シャツを着用したこともよく知られている。
 次いで、社会主義と共産主義が勢力を伸ばしてくると、左翼政党の旗や、共産主義・社会主義国の国旗の色に使われてきた。わが国でも社会主義者らがこの色で呼ばれた時代があった。
 だが、ロマンチストや恋人たちにとって、赤は燃える情熱や愛を示す色だ。
 さて、明日はいよいよ大みそか。イタリアでは今でこそやや下火になったが、恋人同士や若い夫婦の間で、大みそかの夜に身につけるため、赤い下着を贈り合う慣習がある。このため、年末の洋品店のショーウインドーは赤い下着で華やかに飾られる。
 でも、慣れないことはまねしない方がいいかもしれません。興奮して赤信号で動けなくなったり、スペインの闘牛に追いかけられたりする悪夢を見るといけませんから。
 みなさまにとって、来年がより良い年でありますように。
坂本鉄男
(12月30日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)