坂本鉄男 イタリア便り 女性問題の代償

 去る2月末の総選挙では、名目的には民主党を中心とする中道左派連合が勝利を収めたが、上院で過半数を制することができなかったため、首相指名と次期大統領選挙をめぐり政治的大混乱を生じさせた。
 このため、総選挙では負けたものの、結果的には民主党を分裂状態に陥らせ、誕生が確実になった大連立政権には、自派から閣僚の送り込みに成功した中道右派連合を率いるベルルスコーニ前首相の勝利に終わったとの見方が強い。
 だが、私生活では必ずしも順調とはいえない。
 2009年5月に「夫の女性問題」に怒って離婚調停に踏み切ったベロニカ夫人(当時)に対し、昨年12月ミラノ地方裁判所が、月額300万ユーロ(約3億8千万円)の巨額の生活費を支払うよう前首相に命じた。
 イタリアでは、女性側は離婚前の生活水準を保障する生活費を請求できる。とはいえ、イタリア一の大金持ちの前首相でもこの支払額は大きな負担である。
 減額を要求して控訴したものの、控訴棄却の判決が下ってしまった。恐らくは今後、双方の弁護士による話し合いで減額が決められるだろうが、前首相も女性問題がこうも高くつくとは想像もしていなかったに違いない。
坂本鉄男
(4月28日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)