坂本鉄男 イタリア便り 正直者、バカをみる?

 イタリアは毎年5月が税金申告月である。イタリア国税庁が最近、発表した2011年度の国民の所得申告額は、所得がある人々の半数にあたる約2000万人が年額1万5700ユーロ(約200万円)以下だったという。

 いくら不景気とはいえ、都市の道路の両側が路上駐車の自家用車で埋まっている国の国民半数の所得とは信じ難い。

 これに対して、申告額10万ユーロ(約1280万円)以上の金持ちは、僅か1・4%にすぎなかった。国外に別荘を持ち、港には豪華クルーザーを所有する金持ちが多いことからすると、この数字も信じ難い。

 結局、把握の面倒な商店主や自由業者の申告所得額がいいかげんなのだ。業種別平均で見ると、服飾店店主が6500ユーロ、宝石店店主が1万7300ユーロ、レストラン経営者が1万5400ユーロ、弁護士が5万8000ユーロ、医者が6万9500ユーロなどと低く、これを見逃し続ける税務署にも驚いてしまう。

 一方、給与所得者や年金受給者は税金を源泉徴収されるため、欧州連合(EU)内で一番高い所得税を課せられる。

 そればかりではない。彼らは日常生活では21%の消費税と高額な家屋税を徴収され、この結果、収入の約半分を国に納めている計算になるという。

坂本鉄男
(6月30日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)