坂本鉄男 イタリア便り 空港の荷物泥棒は…

 5月初め、イタリア各地の空港内で乗客の荷物の中身を盗んでいた職員86人が一斉に逮捕された。

 これまでも、乗客のトランクから貴重品や現金、カメラなどを抜き取った空港職員が何度も検挙されていたが、いっこうに改善されない。業を煮やした警察が今回は隠しカメラを使って、延べ2200時間にわたり8400本の証拠フィルムを集め、逮捕に踏み切った。

 全世界の空港では毎年20万個もの乗客の荷物が盗まれるといわれる。特にイタリアのように、観光が国際収支の重要な費目の一つになっている国にとっては頭が痛い。この種の犯人をごく軽い刑で済ましてきたことに問題がありそうだ。これから夏休みで旅行に出かける人が増えると思われるが、次のことに注意が必要だという。

 (1)当然のことだが、貴重品はトランクに入れない(2)やむを得ず入れる場合は、購入時に品物の写真を撮っておく(3)トランクを厳重に包んだり空港内でプラスチックのカバーを掛けさせたりするのは、かえって泥棒の目を引く。

 そして、航空会社は紛失・盗難の場合には最高1170ユーロ(約15万円)しか払わないから、自分で紛失・盗難を含む旅行者保険に加入しておくことも忘れてはいけないだろう。

坂本鉄男
(7月14日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)