坂本鉄男 イタリア便り 潤うペット業界

 少子化と単身高齢者世帯の増加の結果、先進国ではペットを飼育する家庭が増えているという。イタリアでも家庭10軒のうち6軒が何らかの動物を飼育し、犬の登録件数は全国で560万匹、猫が野良猫を除き770万匹である。

 イタリアはペット用食品の生産では、欧州第1位で、近隣諸国に輸出している。国内でもスーパーマーケットには“お犬様”と“お猫様”のためのダイエット食品を含め、いろいろな種類のペット食品が棚に何段も並んでいる。そればかりではない。ペット用缶詰類には、犬や猫の食欲をそそるとは思えないが、飼い主の購買欲をそそる立派なラベルが貼られている。このため、デザイン業界も結構、ペット食品の恩恵にあずかっているらしい。

 便乗してインチキも横行し、4月上旬のローマの地元紙では、野良猫の毛を染めて「ペルシャ猫」として売り飛ばし、訴えられた業者が話題になっていた。

 愛犬や愛猫が病気になったら大変だ。この健康維持や病気の治療のための費用もバカにならない。2011年のイタリアのペット医療関係費の推定は、2億3000万ユーロ(約301億円)といい、フランスの推定額の倍だ。世界にはその日の食べ物に困る子供がたくさんいるというのに。

坂本鉄男
(7月21日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)