坂本鉄男 イタリア便り 高すぎる代償

 昨年1月、イタリア中部トスカーナ州沖のジリオ島付近で座礁・横転した豪華客船コスタ・コンコルディア(約11万2千トン)の長さ290メートルの船体を立て直す作業が9月17日未明、無事完了した。

 とはいえ、船体の3分の2以上はまだ水没しているため、来年の初夏までに浮上作業が行われ、その後、解体作業を行う港まで曳航(えいこう)される。

 これまでも費用は6億ユーロ(約790億円)かかったが、今後の曳航と解体にあと数億ユーロの支出が想定されている。

 また、この客室数1500、レストラン5カ所、バー13カ所、劇場、ダンスホール、ディスコ、幾つものプールなどを備えた豪華客船は、建造費4億5千万ユーロをかけたにもかかわらず、2006年7月の処女航海からわずか6年足らずで廃船にされ、鉄くずに化けてしまうことになる。

 船には12の保険会社グループに約4億ユーロの保険がかけられ、32人の死者・行方不明者らへの損害賠償として25億ユーロまでの保険が別の保険グループに掛けられているというから、船会社が破産する恐れはない。

 事故は船長の怠慢や操舵(そうだ)ミスが原因と指摘されているが、それだけで片付けるにはあまりにも被害が大きすぎる。

坂本鉄男
(10月6日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)