坂本鉄男 イタリア便り イエスの遺品集め

今日はイースター(復活祭)である。いばらの冠をかぶせられ、はりつけにされたイエス・キリストの復活を祝うキリスト教徒にとって最大の祝日の一つである。

伝説によると、キリスト教を公認したコンスタンティヌス大帝の母親で敬虔(けいけん)なる信者であったエレナ皇后は紀元320年頃、当時のエルサレムに赴き、イエスの受難に関係する多くの遺品を集め、ローマに運ばせた。

大きいものではイエスを裁きユダヤ人の手に委ね、結局は死刑にしたローマ総督ピラトの館の階段、小さいものでは十字架の破片やイエスを十字架にくぎ付けにしたくぎなどのほか、いばらの冠のトゲなどもあった。

ピラトの館の階段は、ローマのサン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ大聖堂の左前方にある教会の中に復元され、多くの信者がイエスをしのびながら、ひざまずいて一段一段を上っている。

一方、いばらの冠のトゲは多いだけに、イタリア国内だけでも40カ所以上の教会で聖なる遺物としてあがめられている。

また、イエスが架けられた十字架の破片といわれるものを世界中から集めたら、縦・横数百メートル以上の大十字架が出来上がるともいわれている。

坂本鉄男

(2016年3月27日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)