坂本鉄男 イタリア便り 1億2000万円超投じた鉄道模型を公開へ フィレンツェの侯爵、趣味高じて

 余暇に趣味の模型作りに興じる人は案外多いらしい。特に洋の東西を問わず汽車の模型が好きな男性は多いようだ。

 フィレンツェのサン・ジュリアーノ侯爵(84)もその一人。シチリア島に広大な農場を所有し、800年の歴史を誇るお金持ちで、15年間の歳月と100万ユーロ(約1億2千万円)以上を投じて総面積300平方メートルの模型汽車パークを作り上げた。

 設計技師、機械専門家を含めた5人の仲間とともに、ヨーロッパ中の著名模型汽車の展示場をめぐり、参考にして作っただけに、精巧極まるものだという。

 同パークでは、ミラノの中央駅、ベルリンの中央駅などの模型はもとより、景色にも細心の注意を払って、北伊のドロミーティ山系、中伊のトラジメーノ湖などを再現。実際に走行する模型列車も、ヨーロッパの主要列車のほか、オリエント・エクスプレスなども含まれ、愛好者の垂涎(すいぜん)の的となるものらしい。

 現在はフィレンツェ郊外の侯爵邸の敷地内にあるが、年内にはフィレンツェの真ん中に購入済みの元映画館の中に移して、一般公開するという。

 これでフィレンツェの名物が新たに1つ増えるわけだが、大人の趣味も高じれば町の観光に役立つわけである。

坂本鉄男

(2017年2月12日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)