坂本鉄男 イタリア便り ベネチアに「墓」はいかが?

水の都ベネチアの、ガラス工房が軒を連ねるムラーノ島に連絡船で行く途中、杉に包まれた墓地の島、サン・ミケーレ島に立ち寄ったことのある方も多いのではないか。この島には8万5千人が眠っているとされる。

 ベネチア市は昨年、この島の整備費用に充てようと、ベネチアの旧家が建てたものの長年放置され、朽ち果てた5つの墓を競売にかけた。

 島には著名人の墓もあり、その中には遺言によりこの島に埋葬された大作曲家、ストラビンスキーの墓もある。

 今年3月、最初に落札された墓は、ストラビンスキーの墓からもさほど遠くない場所にあった。

 購入者は、フランスの製薬会社の男性社長。約35万ユーロ(約4,600万円)で落札した。この社長は「私も妻も、この世界にまれな島が大好きで、この地で将来2人が永遠の眠りにつけることを、この上ない幸せと思う」と語っていた。

 残りの墓も順次、競売にかけられているが、応札額は25万ユーロ(約3,300万円)前後というから、日本のお金持ちにも手が届く範囲ではないだろうか。

 ただし、日本国内を移動するよりも、島までは高い交通費がかかることをお忘れなく。

坂本鉄男

(2018年9月30日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)