坂本鉄男 イタリア便り 噴水の役目とは

ローマには観光客なら誰もが訪れる「トレビの泉」の他にも大小700以上の噴水があるといわれる。有名な噴水の大部分はルネサンス期からバロック期にかけて法王領の首都であったローマを美化しようとした芸術的センスを持ったローマ法王の下で造られた。

 一方、政治的意図を持って造られた噴水もある。例えば、イタリア中部トスカーナ州の古都シエナの中心広場「カンポ」を飾る「ガイアの泉」だ。市民の郷土意識を高め、他の都市国家に誇れるようにと造られたもので、当時の法律に維持・管理に関する規定があったとされる。

 また、2009年の中部アブルッツォ州を襲った地震で大きな被害を受けた州都ラクイラ市の「99の噴水」も同じ目的を持ったものといえよう。かつて周辺の99の小さな領土の城主たちが1つの都市国家を造ろうと相談した結果、首都となる町の中心に横長い噴水群を造ることとなった。各城主が、口から水が噴き出すようにみえる顔の形にかたどった噴き出し口を1個ずつ寄贈すると決めたことが起源という。

 イタリアの古い都市は、他の都市やサラセンの海賊の攻撃を避けるため山上に造られたものが多く、噴水を見ると水道技術は今のイタリアよりむしろ優れていたことが分かる。

坂本鉄男

(2019年5月28日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)