坂本鉄男 イタリア便り 猫に遺産10億円

 今年も2月22日の「猫の日」が近づいた。

 昨年度の統計によると、イタリアで正式に保健所に登録されている飼い猫の数は、登録犬の470万匹に比べ、はるかに少ない5万匹強だそうである。

 飼い猫の数は別の統計で750万匹以上と推定されてきたから、飼い猫と野良猫の違いがハッキリしないケースが多いのかもしれない。なぜなら、猫の場合、簡単に捨てられて野良猫に格下げされる例も、反対に野良猫が飼い猫に昇格する例も非常に多いからだ。

 昨年12月、ローマで94歳で亡くなった富豪女性が不動産と預金など1千万ユーロ(約10億円)の遺産を、かわいがっていた猫(元野良猫)に残そうとした。

 だが法的に無理なことが判明し、遺産は老女の世話をした女性看護師に委ねられ、彼女がその“金満家”猫を育てることで決着した。

 動物愛護協会によると、こうした考えを持つ人はこの老女だけではないらしい。この問題で回答を求められた愛犬・愛猫家の約40%が「ペットに全財産を残そうと考えたことは少なくとも一度はある」と答えたそうだ。孤独老人が多い社会では当然考えられる現象である。

 息子さん、娘さん、老いた親の世話をしないで粗末にしておくと、遺産はポチやミケに持っていかれますよ。

坂本鉄男
(2月19日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)