『イタリアンポップスセミナー』ご報告

去る7月26日(土)の午後、2回目となる『イタリアンポップスセミナー』を開催したしました。
この日は30℃を軽く超える猛暑日だったにもかかわらず、おかげさまで満席となり、みなさま冷たいドリンクを飲みながらリラックスモードでご参加いただきました。

Exif_JPEG_PICTURE昨年のちょうど今頃、イタリアンポップスのダイジェストをご紹介したセミナーを開催しましたが、その際、参加者のみなさまからぜひ第2弾を!という多数のリクエストを頂き、今回のセミナーの実現となりました。
講師は、前回同様、イタリアンポップスのエキスパート、磐佐良雄氏。磐佐さんは、日本で唯一のイタリア音楽の専門誌「ムジカ・ヴィータ・イタリア」の編集長であり、約10年にわたり、イタリア音楽の愛好会「ピッコラ・ラディオ・イタリア」を運営していらっしゃいます。日伊協会会報誌『クロナカ』にもイタリアン・ポップスの記事を連載中です。

そんな彼に、今回は、「“真のイタリア”を観て・聴いて・体感しよう!」と題して、新旧のバラエティに富んだ歌手とその曲について秘蔵映像を交えながら2時間たっぷりお話いただきました。

Exif_JPEG_PICTUREまずは、イタリアンポップスを代表するディーヴァたちの登場です。現在トップクラスの歌唱力と人気を誇るGiorgia、そして日本のカンツォーネ・ブームの中心的存在、Gigliola Cinquetti。この2人は今秋開講の日伊協会イタリア語講座「 イタリアン・ポップスを楽しもう【中級】」でも取り上げます。特にGigliola Cinquettiは、16歳でのデビュー当時の初々しい映像と2年前(65歳)のときのライヴの様子が紹介され、今も変わらず活躍し続けている姿に感嘆しました。
つづいて、現代イタリアで一番の国際的知名度を誇るLaura Pausini。音楽活動20周年を迎えた彼女の活動を数々のヒット曲で振り返りました。

次に紹介されたのは、1967年のサンレモ音楽祭中に自殺し、28歳の短い生涯を終えた伝説のカンタウトーレLuigi Tenco。皮肉にも死後再評価される彼の歌は、知的で美しい詩で知られ、イタリア語の文法の学習にも最適です。途中、複文や様々な時制が頻出する詩を題材にミニ文法講座も展開され、イタリアンポップスの訳詩を数多く手がけていらっしゃる磐佐さんならではのセミナー内容となりました。前出の2人のディーヴァ同様、彼も今秋の「 イタリアン・ポップスを楽しもう【中級】」講座で取り上げます。

DSC00273そのLuigi Tencoに代表される「ジェノヴァ派カンタウトーレ」として、Bruno Lausi、Umberto Bindi、Gino Paoliも紹介されました。「ジェノヴァ派カンタウトーレ」とは、1960年代のイタリア音楽界に新風を吹き込んだシンガーソングライター(イタリア語でカンタウトーレ)たち。港町であり、反逆精神旺盛で新興勢力が生まれやすい土地柄のジェノヴァは、外国の歌も入って来やすく、彼らの作る曲は当時の他の歌とは一線を画していました。

最後は、ジェノヴァ派カンタウトーレに留まらず、現代イタリア音楽の巨頭のひとりと目されるFabrizio De André。常に庶民的視点を持ち、娼婦など社会的マイノリティに捧げた作品を数多く発表しています。また、地中海全域の民族楽器をふんだんに使用し「地中海音楽」に根ざした曲も精力的に発表しています。セミナーで紹介された全編ジェノヴァ方言で歌われている“Creuza de mä”は、歌詞はわからなくても音楽を聴いているだけで地中海の風を感じ取れる曲でした。彼は15年前に亡くなりましたが、イタリアでは今でも老若男女誰もが知る超有名歌手です。残念ながら日本での知名度は高くありませんが、彼の楽曲のひとつ“Il pescatore”は中国語でもカバーされているほど、海外でも知られています。音楽界に限ったことではありませんが、「日本に入ってくるものはアメリカのフィルターが通されている」という磐佐さんの言葉が印象的でした。受身的に情報を得るだけでなく、インターネットなどを通して直接イタリアのメディアにアクセスすれば、リアルなイタリア音楽の世界をより身近に感じることができるでしょう。生のイタリア音楽界の情報満載の今回のセミナーもそういった意味でとても貴重な機会でした。

Exif_JPEG_PICTUREセミナー後には神保町にあるイタリア音楽の専門店「タクト」さんのCD販売もあり、巷のCDショップではなかなか見つけることのできないレアなCDも購入することができました。
アンケートでは、ぜひ第3弾も!というリクエストをたくさんいただきました。次回もどうぞご期待ください!

最後になりましたが、暑い中ご参加いただいた受講生のみなさま、講師の磐佐さん、「タクト」のスタッフのみなさま、どうもありがとうございました。