坂本鉄男 イタリア便り 列車衝突の背景に

 今月12日の正午前、オリーブ畑とブドウ畑が広がる南伊プーリア州の平野の真ん中を走るローカル線で、4両編成の列車同士が時速約100キロで正面衝突し、死者23人、負傷者50人以上という惨事を起こした。

 いくら単線とはいえ、人為的原因の事故としか思えない。

 イタリアは1960年代のモータリゼーションの普及により、長年「旅行は自家用車で」が常識であった。

 このため、道路の舗装率や高速道路の充実ぶりに比べると、鉄道網の整備は大きく遅れてきた。最近ようやく、ローマ-ミラノ間など、大都市間には最新式の高速列車が頻繁に走るようになったが、南伊では12日の惨劇が起きた区間を含め、鉄道の70%が単線である。

 思い出されるのは、一昨年の夏、日本から来て南伊を鉄道とバスで旅行した友人夫婦の話である。

 「イタリアのローカル線には驚きましたね。田舎の駅で待っていたら、汽車が停車しないで通過してしまいました。遅れていたためですかね。駅員がこちらを見て肩をすくめているのにはあきれました」

 今回の事故が、ローカル線の複線化につながればよいのだが。

坂本鉄男

(2016年7月17日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)