坂本鉄男 イタリア便り 中国の責任、国連の場で

全世界で蔓延(まんえん)中の新型コロナウイルスは、ワクチンの開発が急ピッチで進む一方、いつ収束するのか予測も立っていない。このままでは14世紀に欧州を襲い、人口の3分の1を死に追いやり、収束まで何十年もかかったペスト(黒死病)と同じようになるのではないかと想像し、ゾッとする。

 米国の死者はベトナム戦争での米軍戦死者を上回った。報道によると、ミラノを州都に持つイタリア北部ロンバルディア州の死者は、第二次大戦末期の5年間におけるミラノでの民間人犠牲者の約5倍となる1万人を超えた。経済・商業・工業が受けている損害も深刻だ。世界各国の被害額を合計すると天文学的な数字になるのは間違いない。

 新型コロナの発生源が中国の湖北省武漢の周辺(武漢のウイルス研究所との説もある)であることは中国政府も当初、事実上認めていたが、自国の騒ぎが落ち着くと、一転して発生源が他国にあるかのような主張を始めた。マスクを寄贈して恩を売り、南シナ海に行政区を新設して“主権の存在”を既成事実として認めさせようとしている。

 不思議なことに、こうした中国に対して、日本政府から損害賠償を求める声が聞こえてこない。今こそわが国は、原因究明と賠償責任の取り方などを討議する機関の設置を国連の場で求めるべきだ。

坂本鉄男

(2020年5月12日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)