坂本鉄男 イタリア便り 祖国への忠誠宣誓

 昨年のように、わが国の国会議員が政治資金規正法違反を繰り返し、検察官が証拠を改竄(かいざん)、首相も尖閣諸島と北方領土が日本の領土であると強く押し切れないとなると、国民は国会議員や公務員たちの祖国と国民への忠誠心を疑いたくなるだろう。

 綱紀粛正が叫ばれるイタリアでも、戦後間もなく大統領令として発効したものの約15年前に廃止された「公務員の憲法および国民に対する忠誠宣誓」の復活がいま、話題に上っている。

 考えてみれば、各国の軍隊では「祖国と憲法への忠誠」を宣誓しているし、16世紀以降の長い間、欧州の大学医学部の卒業式では、ドクターの卵たちが「医聖ヒポクラテスの誓い」を宣誓し、医者がその職務の根幹として持つべき尊い倫理観を胸に深く刻んできた。

 今のような無責任時代では、誓いを守らなくても何のおとがめもない。昔は「医は仁術なり」と考えた医師が多かったが、現在ではヒポクラテスの誓いに反して「人を殺す薬を与え」「女性に流産させる」医者もいる。だが、厳粛な誓いは生涯、肝に銘じて忘れないともいわれる。

 どうです、今年からはわが国でも国会議員と公務員に「法律の順守と祖国に対する忠誠」の宣誓義務を課してみては。もちろん、宣誓違反者は免職である。議員が半数になれば万歳だ。

坂本鉄男
(1月9日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)