坂本鉄男 イタリア便り 「愛の勝利」なお遠く

 日本国憲法24条は「婚姻は、両性の合意のみに基いて…」と定めている。つまり、結婚は男女の合意に基づくものとして、同性の結婚については認めていない。

 欧州連合(EU)内では近年、オランダ、ベルギー、スペインなどが法的に同性間結婚を容認。だが、カトリックの伝統が強いイタリアでは、現在も同性間結婚を認めていない。

 首都ローマの南約70キロのラティーナ市在住のアントニオ・G氏とマリオ・O氏の2人の芸術家男性は、そんなイタリア国内法にひるまず、2人の愛を完結するため10年前、オランダのハーグ市役所で婚姻届を出し、受理された。

 しかし、イタリアでは認められないため、結婚の認知を求めて法廷闘争を始めたが、憲法裁判所は「共和国憲法29条は、結婚とは、異なる性を有する者の結合と規定している」として申し立てを却下した。

 ところがである。

 去る3月15日、最高裁判所が「同性間結婚にも、異性間結婚と同じ権利を与えるべきだ」との判断を下した。

 だが、2人が勝利を叫ぶのはまだ早い。

最高裁は「これに関する法律は国会が決めるべきだ」との付帯意見も付けたのだから。
坂本鉄男
(4月29日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)