坂本鉄男 イタリア便り よっ、2代目!

 スーパーに客を奪われた小売店の息子の多くが親の商売を引き継がないのは、イタリアでも同じだ。ローマのわが家の周囲でも、食品系商店、特に精肉店の数が激減しているが、2代目の努力でかえって繁盛している商店もある。

 例えば、わが家の鮮魚店は2代目。値段が高いことで有名だが、魚の種類と鮮度で成功している。わが家が魚を刺し身で食べることが多いのを知っていて、大勢の客の前でも平気で「これは鮮度がやや落ちるからお宅には向かない」と言うので、こちらが困る程だ。

 食料品店店主も2代目。愛想が良い上、スーパーにはない珍しいチーズ類で店の特徴を出している。週2回、道路に露店を開く農家も2代目。農産物の新鮮さと安さで大繁盛である。

 職人では、水道業者の2代目が手間賃は高いものの、携帯電話で呼び出せば直ちに飛んできてくれるので心強い。先日、この水道業者の2代目がこう言っていた。

 「今のように商店が減り、職人の数が激減している時代こそチャンスです。商売の特色を生かし真面目に客に対応し、固定客を確実につかめば、そこらのサラリーマンよりずっと収入も多いのですよ」と。

 わが国の2代目商店主らにも通用する言葉ではないか。

坂本鉄男
(5月6日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)