坂本鉄男 イタリア便り 地震予測でパニック

 イタリア北部のポー川流域地帯で、局地的な強震の後、余震が続いている。去る8日、モンティ首相が地震学者を主力とする「国家大災害委員会」の報告に基づき、「この地方には今後も強震の恐れがあり、他の地域にも波及する可能性もある」と住民に注意を促した。

 さあ大変。地震や余震に慣れていない地域の市町村長から、「これはパニックをあおるようなものだ。仮設テントの被災者たちは、怖くて誰も元の住居に戻れないではないか」との抗議が巻き起こり、大災害委員会を訴えてやると息巻く始末だ。

 この点、日本国民は偉い。誰もが予想できなかったであろう東日本大震災の後、いろいろな地震学者が、やれ「首都直下型大地震」だ、やれ「房総沖大地震」だとか、果ては「富士山直下型地震が引き起こす大噴火」から「遠州灘・南海連動大地震」まで、他の国の人々が聞いたら恐怖でうろたえかねない発言にもパニックを起こさない。

 日本人は、昔から「地震、雷、火事、おやじ」と地震が一番怖いものと知り、起こったら天災と諦める術も身につけてきた。だが、政府も地震学者も、日本人が昔から身につけたこの諦めの上に、あぐらをかいてはいけないことだけは、よく覚えておいてもらいたい。

坂本鉄男
(6月17日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)