連続文化セミナー 『ファシズムと芸術』
第5回 ファシズムの舞踊 ─ ファシズムとイタリアのモダン・ダンス

 ファシストたちがイタリアの政権を担った1922年から42年の「ファシズムの時代」を生きた芸術家たちとその作品について、様々な分野から専門家が5回にわたって解説してきました2014年連続文化セミナー 『ファシズムと芸術』 もいよいよ最後の回を迎えました。DSC01322

第5回は、12月13日(土)に『ファシズムの舞踊 ─ ファシズムとイタリアのモダン・ダンス』と題して、東京外国語大学リサーチ・フェローの横田さやか先生にお話しいただきました。参加者は、20名弱でした。

ファシズムの時代、さまざまな芸術形式がプロパガンダの媒体を演じたとき、はたして舞踊はいかなる役目を担ったのでしょうか。身体そのものによって実践される表現芸術である舞踊には政策が及ばず、ファシズムによる舞踊形式は誕生しませんでした。20世紀初頭のヨーロッパでは、自由な表現によるモダン・ダンスが隆盛し、「踊る身体」は、前世紀に確立された厳密な規律に基づくバレエから解放された新たな表現を試みます。

イタリアにおいては、20世紀の舞踊史を牽引するほどの支配的なスタイルは確立されなかったと定義されるのが一般的ですが、イタリア性を象徴する興味深い傾向が同時に見られることが今再考察されています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA本セミナーでは、ファシズムの時代に見られる舞踊を考察するにあたり、まず、19世紀末のナショナリズムを象徴する「バッロ・グランデ」と、20世紀初頭の、具体的には1917年のフィリッポ・トンマーゾ・マリネッティによる「未来派ダンス」宣言から始まる未来派ダンスの動向を詳しくお話しいただきました。身体の機械化に特徴付けられる未来派の身体概念から始まり、「増強する身体」を可能にする理想的主題たる「踊る身体」を最もよく表現する”飛行”するダンス―ジャンニーナ・チェンシによる「航空ダンス」については、その映像が発見されていないためその教え子であるシルヴァーナ・バルバリー二(Silvana Barbarini)によって再現された映像(本邦初公開)で見せていただきました。最後にアントン・ジュリオ・ブラガリアによる新しいイタリア的舞踊教育への提言等に触れて、ファシズム期における「踊る身体」の変容について考察していただきました。

<講師プロフィール>
■横田 さやか(よこた さやか)
慶応義塾大学文学部卒業、東京外国語大学大学院博士後期課程、ボローニャ大学大学院博士課程修了。ロータリー財団奨学金によりミラノ大学へ留学した後、東京外国語大学・ボローニャ大学間に締結された共同指導共同学位授与制度に則し、ボローニャ大学芸術学部に於いて研究活動を行い、両学にて博士号を取得。専門は、イタリア未来派とイタリア20世紀舞踊史。

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さて5回にわたってお送りした「ファシズムと芸術」の連続シリーズを終えました。
おそらくその芸術形式の性格に大きく依存すると思われますが、「建築」、「都市計画」、「映画」においてはファシズムがその宣伝に利用し、政策が反映されたのに対して、「美術」と「舞踊」においては、直接の関係は持たなかったと言えると思われます。しかしいずれも芸術が抑圧されることなく、「未来派」という現代につながる大きな芸術の流れがこの時期に生まれ、育っていったことに大きな驚きをもちました。

この日伊協会の名物となりました連続文化セミナーシリーズは、来年新たな構想の下「ローマの皇帝とそのイメージ(仮題)」としてお送りします。ご期待ください。
  (山田記)

| カテゴリー : レポート | 投稿者 : adminaigtokyo