坂本鉄男 イタリア便り 7月と8月の月名

 本日の話題は7月と8月の月名の語源、つまり、英語のジュライとオーガスト、イタリア語のルッリオとアゴストの語源である。

 ローマ暦(陰暦)は現在の3月から始まり、現在の7月と8月はそれぞれ「5番目の月」と「6番目の月」を意味するクゥインティリスとセクスティリスと呼ばれていた。それを、ユリウス・カエサル(つまりジュリアス・シーザー)が、1月から始まる太陽暦のユリウス暦(現在われわれが使っているグレゴリオ暦の前のもの)に変えたのである。そして、カエサルは新しい7月を自分の生まれ月として「ユリウスの月」、のちの英語のジュライの元になる月名にした。

 一方、8月オーガストの方は、これも、初代ローマ皇帝アウグストゥスが養父カエサルが制定した暦年が乱れていたのを調整し、「6番目の月」セクスティリスを「アウグストゥスの月」と命名したことに由来する。なお、「アウグストゥス」(尊厳ある者の意味)とはカエサルの養子ガイウス・オクタビアヌスに与えられた称号であり通称であった。

 彼が自分の生まれた9月よりも8月を選んだのは、最初の執政官就任月であったからといわれる。彼が生まれ月を選んでいたら現在の9月がオーガストになっていたかも。

坂本鉄男
(7月1日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)